温泉にこもる日々

オーロラはほとんど見られず。そのぶん、氷点下40°Cの山奥で温泉にはたっぷり浸かった。

数年ぶりに、またフェアバンクスにやって来た。行きの飛行機から写真を撮ってみたら、なかなかいい感じ。その後、スーパーへ買い出しに行って、雪が降ったあとに車を掘り出さないとどうなるのか、その実例を見せてもらった。

今回のフェアバンクスでの予定は、驚くほどシンプル。ほぼホテルにこもって、オーロラ待ちである。

前に来たとき、僕は山奥の温泉に行った。ただ、そのときは日帰りで、泊まってはいない。あれだけ山奥ならオーロラもよく見えるはず、ということで、今回は泊まることにした。しかも2日間。

温泉へ向かう途中、以前も運転したあの道をまた走った。今回は前よりずっとましだ。何しろ、ちゃんと雪なのだ。前回のことはほかに何も覚えていなくても、路面が全部氷だったことだけは忘れられない。

温泉へ向かう道中には、ちょっとした騒動もあった。一人のところに、面接を受けた会社からメールが届いたのだ。後日電話で面接の結果と今後の流れを話したい、という内容だった。その直後、山奥の圏外エリアに突入。本人はすっかり焦ってしまった。

まずは温泉ホテルにチェックインして、有料のWi-Fiを購入。ところが、これが名前だけのWi-Fiで、何も開けない。ウェブページなんて論外で、スマホのメールアプリだけがかろうじて動いた。通信量が少ないからだろうか。

携帯は完全に圏外で、連絡手段がほぼない。いったん車で山を出て、電話を受けてから戻ろうかとも考えた。でも、さすがに面倒すぎるし、メールにも今すぐ電話するとは書いていない。結局やめた。

こんなメールは1日や2日遅れたところで問題ない、と頭ではみんな分かっている。会社側なんて、1週間や2週間待たせることも普通にある。でも、面接を受けた側は落ち着かないものだ。そこで見つけたのが、洗濯室にあった固定電話。これはちゃんと着信できるらしい。本人は会社にメールを送り、電話をするならこの番号に、と伝えた。

その日の午後、僕たちはその電話の横で2時間以上待った。もちろん、電話は一度も鳴らなかった。

で、この話の結末はというと、2日後に山を出てから一本電話したら、あっさり解決。あんなに焦る必要はまったくなかった。

さて、温泉ホテルの話に戻ろう。

泊まった2日間は、運も悪かった。オーロラは弱くて、肉眼ではほとんど見えない。それに僕には、このホテル自体はオーロラを見るのにあまり向いていないように思えた。夜も照明がついているのだ。ホテル側もかなり気を使っていて、外の大きな照明はなるべく消していた。でも、宿泊客の安全を考えると、全部真っ暗にはできない。そのわずかな明かりでも、もう明るすぎた。オーロラを見るなら、さらに暗い山奥へ行くしかない。いや、それなら何のためにここに来たんだ。

オーロラは見られなかったけれど、温泉にはたっぷり浸かった。携帯は圏外、Wi-Fiは使い物にならない。温泉に入る以外、何をすればいいのか。しかも、この数日は本当に寒くて、夜になると氷点下40°Cくらいまで下がった。

そんな中、温泉で遊んでいた。氷点下40°Cだと、お湯を頭にかけるとすぐ冷えて凍る。体はお湯の中で頭だけ出している状態でも、髪のあたりは十分寒いので、氷が溶けずにそのまま固まる。結果、髪があちこちに逆立って、みんなそろってスーパーサイヤ人に変身。これはかなりテンションが上がる。

この2日間、ここの軒下を見て、寒い地方では軒下から甘い恋が始まらない理由がよく分かった。ロマンスが始まる前に、巨大なつららで人生のほうが終わるからだ。

これが落ちたら、一発終了。

結局、ここではまともにオーロラを見られなかった。旅全体を通しても、僕が数年前に見たときと同じくらい弱いまま。ちょっと残念だった。