タホ湖3日間ドライブ旅行

スポーツカーを借りてタホ湖を一周し、二つの峠を遠回りして帰る旅。

秋晴れの気持ちいい季節、レンタカーを借りてタホ湖をドライブすることにした。

今回借りた車の話をするなら、まず今回借りた車の話をしなければならない。借りたのはポルシェ718。話は数か月前にさかのぼる。サービス開始直後の『Neverness to Everness』というスマホゲームがポルシェとコラボし、世界限定生産の最上級スポーツカー、ポルシェ918スパイダーを実装した。それを見て、一度試してみたくなった。でもさすがにこれは高すぎる。100万ドル級では買えないし、レンタルにも出てこない。

そこでポルシェにはほかにどんな車があるのか調べてみたら、エントリーモデルのスポーツカーは驚くほど安かった。一台ほしいかも、と思ったのだが、どうも簡単には買えないらしい。たとえばカイエンなら、ネットで好きな仕様を選び、メーカーにその車を造ってもらえる。でもポルシェのスポーツカーはディーラーの割り当て台数に強く左右されるそうで、公式サイトで一台仕上げたからといって、必ず生産してもらえるわけではない。しかもこの世代の718のガソリン車は2025年に生産終了し、次世代はもともとEVへ移行する計画だった。

つまり買うなら、今市場に出ている中から選ぶしかない。あるものを買うしかないのだ。ポルシェの公式サイトで探してみると、全米に認定中古車が20数台しかなかった。もちろん認定されていない中古車ならもっと多いが、状態や過去の改造については自分で判断しなければならない。

とはいえ718はそこまで高くない。普通の車二台ちょっと分くらいだ。特に718のベースモデルはポルシェの中でも安い部類で、パナメーラやカイエンより安いものさえある。ランボルギーニやフェラーリのように、普通の車十数台、下手をすれば数十台分もする世界を想像していたので、かなり違った。718は見事に僕の知識の穴を埋めてくれた。

次に試乗方法を調べたところ、ネットには「ほぼ無理」と書かれていた。ポルシェディーラーに現車があれば乗れる。なければ乗れない。ただそれだけ。でも全米で数十台しかなく、最寄りの在庫店は100km以上先だった。わざわざそこまで行って10分乗るのも、何をしているのかよく分からない。別のディーラーから希望の店舗へ運んでもらう方法もあるらしいが、そのためには「この特定の一台を本気で買うつもりだ」と伝えなければならない。輸送費は一回1000ドル以上なので、買わないかもしれない客のために運んでくれる可能性はほぼない。担当者の機嫌がよく、将来の顧客だと思ってくれれば可能性はあるらしいが、かなり低い。

というわけで、いちばん現実的な試乗方法はレンタルだった。そこで一台借りた。せっかく借りるなら何かしなければもったいない。こうして、車を試すためだけにドライブ旅行を丸ごと一本組むことになった。完全に順序が逆である。

もっとも、この夏はもともとアイスランド一周ドライブを考えていたものの、いろいろあって行けなかった。今回はその心残りを少し埋める旅でもある。

借りたポルシェ718がこちら。

最初に見たときは、ものすごく格好よかった。見慣れてきても、やっぱりものすごく格好よかった。

まずは運転した感想から。「運転する体験」だけで言えば、かなりよかった。ネットで見かけた、慣れにくいかもしれない点も、実際にはそれほどでもない。

まず車高がとても低く、地面に座って運転しているような感覚になる。正直、これはそれほど気にならなかった。地面に近いことははっきり分かるが、それで運転に何か影響があったかと言われると、僕には特になかった。それより問題なのはフロントの長さだと思う。もともとノーズが長いうえに座る位置も低いので、前の車との距離感を見誤りやすい。ここは少し慣れが必要だった。

次は左右の視界。カリフォルニアの交通ルールでは、車線変更のときにミラーを見るだけでなく、振り返って死角に車がいないか確認する必要がある。でもこの車は、振り返っても後方がとても見づらい。車体に遮られ、運転席から横に見える範囲はほぼ自分の体と同じ位置までで、それより後ろはかなり見えにくい。実際の車線変更では、振り返って確認することに加え、ブラインドスポットモニターとミラーに映る車の位置をいつも以上に頼りにした。車線変更前に振り返る習慣が強い人は、ここにも慣れが必要だと思う。

そしてエンジンの位置。十数時間運転したが、ミッドシップエンジンと後輪駆動が自分の運転にどう影響するのか、最後までまったく分からなかった。雨や雪の厳しい路面、あるいはドリフトでもすれば分かるのかもしれない。エンジン音が前ではなく後ろから聞こえるとも言われていたが、これも体感ではあまりはっきりしなかった。普通に走っていると、どの車でもエンジン音は車内サラウンドで、前後ではなく「車の中」から聞こえる感じがする。音量は普段の車より少し大きい気もしたが、その程度だった。僕の車がもともとうるさいせいで、あまり差を感じなかった可能性もある。

違いを一つ挙げるなら、いちばん分かりやすいのはアクセルを強く踏んだときだ。普通の車なら、小さなブーンが大きなブーンになる。ここで言っているのはガソリン車のこもったブーンで、EVの音ではない。でもこの車は、そんな単純なブーンでは済まない。エンジンがゴロゴロと鳴り、その間に時々、配管が破裂したようなパンパンという音まで混ざる。そのときは、音が後ろから来ているのがはっきり分かる。僕にはかなり気持ちいい音だったが、まあ気持ちいいだけでもある。モータースポーツ好きなら、聞いた瞬間にアドレナリンが急上昇するのだろう。始動時も同じで、火を入れると大きな轟音が一発。ネットで言われていたとおり、駐車場中に到着を知らせる仕様だった。

ステアリングは重く、しかもとても敏感だった。これがいわゆる「ドライビングフィール」なのだろう。敏感すぎて、ほとんどの時間かなり力を入れて握っていたので疲れた。ただ、直進安定性はとても高い。少し力を抜いても真っすぐ走り、簡単に向きが変わったりはしない。これも慣れの問題なのだろう。そうでなければ、ずっと力んで運転することになってしまう。

まとめると、アクセルは力強く、加速は速く、ステアリングは敏感、重心は低く、車体は安定している。「運転する感覚」だけを評価するなら満点で、とても楽しい。『Need for Speed』のように車の流れを抜けていく感覚も確かにあった。

次はネットを見るだけでは分からない体験について。実際にしばらく使わないと見えてこない部分だ。

まずドアの位置。シートが深いため、乗り込むというより穴に潜るような動きが必要で、SUVや大きなセダンのように、足を上げてそのまま腰を下ろせる車ではない――という話はネットで見ていた。これは初めて乗った瞬間に実感した。でも、それをもっと痛感したのは狭い駐車場だった。最終日に食事へ行った店の駐車スペースが小さく、とても混んでいた。停めたあと、ドアは30度ほどしか開かない。降りるときも窮屈だったが、その時点ではまだ問題の深刻さに気づいていなかった。再び乗ろうとするまでは……。

この車はドアを開けると、ほぼコックピット全体が開口部になる。つまりドアの後端はシートより後ろ、運転席後方のボディー部分にある。そこは運転席の後ろからさらに10cmほど離れている。普通の車ならドアの後端は前席の背もたれ中央あたりなので、それより20cm近く後ろにあることになる。ドアが少ししか開かず、後ろ側から体を横向きにして滑り込む必要があると、ここで問題が発生する。片脚を入れたのに、足が床までまったく届かず、危うくシートを踏みそうになった。仕方なく思い切り前へ伸ばし、最後はほとんど縦開脚の姿勢で車内に押し込まれた。

結論。ドアを全開にできないと、乗るのがとても難しい。先に開脚を習得しておくことをおすすめする。ドアの角度次第では縦開脚でだいたい足りるが、極端な場合には横開脚も必要だ。あるいは最初から、ドアを開けられない場所へ行かないこと。

続いて後ろのトランク。エンジンが座席の後ろ、トランクのすぐ隣にあるため、しばらく走ると中がはっきり熱くなる。冷凍が必要なものを入れるのには向いていない。たとえばスーパーでアイスを買って後ろに入れ、そのまま家まで走れば、あっという間にきれいに溶けると思う。

そして前後のトランクを閉める方法。どちらも上から強く押さなければならない。問題は、この「強く押す」という部分だ。今の車、特にSUVなら、後ろのトランクは電動で開閉でき、手で触る必要がない。電動でなくても、内側の取っ手をつかんで勢いよく引き下ろせば、慣性で閉められる。外側のボディーには触れずに済む。

でもこの車では無理だ。前も後ろも、閉めるには外側に手を置き、力を入れて押さなければならない。普段なら大した問題ではないが、二つの状況ではかなり困る。一つ目は、今回のような長距離ドライブ。泥だらけとまでは言わないが、車体には大量のほこりが付く。前後のふたには本当に触りたくなかったが、触るしかなく、大きな指紋まで残った。二つ目は、フェニックスのような猛暑の場所。以前行ったときは日中の気温が45°Cに達し、車体表面は50°C、場合によっては60°Cを超え、卵が焼けるほどになる(実際、ネットにはそんな動画がいくらでもある)。そこで手に力を込めて前後のふたを閉めるとなると……自分の手を焼きたいのか、蒸したいのか、それとも拷問としてじっくり仕上げたいのか、という話になる。

要するに、日常の実用性という点では、この車にはいろいろ問題がある。

そして、全部体験したうえでの最終結論。買うか、買わないか。答えは買わない。購入前の試乗のつもりで借りたのに、試乗した結果、買わないと決めた。実に有意義な試乗だった。

最大の理由はこれだ。この車を運転するうえで最大の問題は、運転しなければならないこと。以上。本当にそれだけだ。長く運転すればするほど、自動運転や運転支援のありがたさが身に染みる。どれだけ「ドライビングフィール」がよくても、そもそも僕は運転したくない。

以前TikTokで見た、マクラーレンを買った人の動画を思い出した。買って非常に後悔していて、価格が10分の1しかないテスラのほうがいい、と言っていた。買うならテスラ、高級車に乗りたければ数日レンタルすれば大した金額ではない、と。当時は完全には理解できず、ただの自慢なんじゃないかと思っていたが、今ならよく分かる。僕に聞かれたら、迷わずEVをすすめる。高級車に乗りたければ、数日だけ借りればいい。

さて、ずいぶん話した結果、せっかくのドライブ旅行が高級車入門になってしまった。今回の旅へ戻ろう。そもそもの目的は単純に車を走らせることだったので、往路も復路もわざと遠回りにした。タホ湖では一周する。それだけの計画だった。それからネットで調べてみると、ここはちゃんとしたリゾート地としてかなり開発され、自然の湖一つだけではなく、いろいろなアクティビティがあるらしい。そこで初日の夜にサンセットクルーズ、翌朝に透明なカヤックで湖を漕ぐ、二つの予定を入れた。

ところが初日の移動中、翌日は湖上の強風が予想されるため、予約したカヤックは中止だという連絡が来た。湖で漕げないのは残念。この透明カヤックはSNSでも人気のアクティビティだったのに。

初日はCA-88を通ってタホ湖へ向かった。道中の景色は……景色と呼べるものがほとんどなかった。少なくとも実際に走った範囲では、特に目を奪われる場所はなかった。だいたいこんな風景である。これを絶景と呼ぶのはなかなか難しい。

夜は船に乗り、食事をしながら夕日を見ることにした。夕日を見るとはいうものの、実際にはほとんど見えない。ここには海の水平線がなく、湖畔には山がある。太陽は山の向こうへ沈むので、完全に見えなくなっても空はまだ明るい。これのどこが夕日なんだ。まあ、湖の景色を楽しむクルーズだと思えばいい。

二日目。本来なら早起きしてカヤックへ行くはずだったが中止になったので、自力で湖を一周することにした。最初からSand Harborの交通事情に圧倒された。もともとカヤックをする予定だった場所で、今度は普通に公園へ入ろうとしたのだ。

反時計回りで一周していた。時計回りなら湖側の車線を走れて展望スポットにも停めやすいからか、多くの人は時計回りで、反時計回りは少ないように見えた。Sand Harborに着くと、こちら側は普通に流れ、左折して入ることもできたが、対向車線は完全に終わっていた。片側一車線しかなく、公園入口へ向かう車の流れが極端に遅い。中で駐車スペースを探す車が少しずつしか動けず、入場する車は15秒に一台ほどのペースだった。でも道路は片側一車線なので、公園へ入りたいかどうかに関係なく、全員そこで渋滞に捕まる。

この様子では中の駐車場もかなり厳しいはずだ。ほかの車が出なければ、入っても意味がない。少し考えて、そのまま立ち去ることにした。ここはいつかカヤックをしに戻ればいい。わざわざ中へ入って混乱に加わる必要はない。

先へ進むと、対向車線の渋滞は何kmも続いていた。いつ解消するのか見当もつかない。この進み方では、最後尾の車は最低でも数時間待つだろう。いったい何をしに来たのか分からなくなる。

というわけで強く警告しておく。朝、時計回りでSand Harborを通ってはいけない。公園へ入るかどうかに関係なく、終わる。

その後は湖を一周しながら、Kings Beach、Sugar Pine Point State Park、D. L. Bliss State Park、Emerald Bay、そして道沿いの適当な展望スポットに立ち寄った。

特定の観光名所にこだわらなければ、道中の景色はかなりよかった。ただし、特別な何かを期待して名所を追いかけると、がっかりするかもしれない。

このパノラマ写真を限界まで拡大すると、裸でボートを漕いでいるおじさんが見える。

なぜこの人は漕げているんだ! この日は確かに風があった。商業カヤックツアーは危険が大きいと判断して中止したのだろうが、自分で漕ぐ人は普通に水へ出ていた。

Sugar Pine Point State Parkでは、水中へ延びる線路を見た。ところが、誰もいない! 中国にあれば、こんなSNS映えスポットは撮影待ちの列が地平線の向こうまで続くはずだ。でもここでは誰も気にしていない。みんな自然のままの砂浜や湖畔のほうが好きらしい。

Emerald Bayでは、岸からタホ湖唯一の島を見た。前日の夜、船でちょうど一周したばかりの島だ。

そして岸辺の家。

これで二日目のドライブは終了!

タホ湖の周回道路は、片側一車線の区間が多い。そのため朝の公園入口のような渋滞にぶつかると、ほぼその場で爆発するしかない。幸い、今日は反時計回りで一周し、最後までそんな目には遭わなかった。

そしてタホ湖の景色は……どう言えばいいのだろう。よくないと言えば、それは絶対に違う。でも、そこまで素晴らしいかと言えば、少し言いすぎにも感じる。いろいろな絶景を見てきた僕にとっては、家から車で行ける観光地の一つであり、まあこのくらいという印象だった。

似たような湖や水景なら、僕は今でも九寨溝を真っ先にすすめる。これまで行ったすべての場所の中でも、九寨溝の景色は世界で別格だと思う。田園風景が絵のように美しいといわれる『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地、ニュージーランドでさえ、あれに並ぶ水景は見つからなかった。

三日目は、長い長い帰り道。大きく南へ回り、まずMonitor Pass、次にSonora Passを通って帰宅した。

この二つは特定の観光地ではなく、どちらも道の一区間だ。理屈のうえでは、ヨセミテで有名なTioga Passと同じ種類の峠道である。当時見たGoogle Mapsの評価とレビュー数で言えば、Monitorがいちばん下、次がSonora、Tiogaが圧倒的トップだった。

さすがにTiogaまで回ったら、今日中に帰れない。実際に走ってみても、Monitorがいちばん微妙で、Sonoraはそれよりずっとよかった。

こちらがMonitor Pass。

その名を永遠に刻め!

道沿いはだいたいこんな景色。本当に人里離れた荒野だが、Google Mapsの写真とは驚くほどよく似ていた。車内から撮った写真が多いので、変な反射が映り込んでいても気にしないでほしい。

Sonora Passに着くと国有林へ入り、両側の景色はかなりよくなった。しかもここは区間がはっきりしていて、両側の入口にゲートがある。もちろん今は開いていて、通行を遮ってはいない。でも冬に雪が降ると閉鎖される。入口の標識にも、冬季閉鎖中は通常の除雪をして通行を維持しないとはっきり書かれていた。

そのまま国有林の中を走り続けた。道の両側はずっと木で、同じような景色が何十kmも続いた。

やがて国有林を抜け、高速道路で帰宅。今回の旅もこれで正式に終了した。